ボディメカニクスで腰痛予防

介護職に従事している人が抱えている身体トラブルの中で最も多い疾病は腰痛です。利用者の体位変換、移乗、移動介助をはじめ、介護職における業務の多く場面で腰に負担がかかることから、腰痛を引き起こしやすくなっていると考えられます。

腰痛が悪化してしまうと介護業務に支障をきたすだけではなく、介護職員自身の生活にも影響が出てしまうことから、腰痛に関するさまざまな知識を使って未然に防いでいくことが必要です。行政においても腰痛を介護の現場における重要課題としてさまざまな施策に取り組んでいて、各事業所では積極的に腰痛予防対策が推進されています。

腰痛予防の最も基本となるのは、スクワットなどの筋トレを行ったり、ストレッチで筋肉をほぐしたりすることで、腰痛が起きにくい体作りをすることです。その上で、力学の原理を人体に応用するボディメカニクスを介護業務に活用することで、一つ一つの動作に伴う負担を大きく軽減することができ、腰痛予防につながります。

ボディメカニクスでは骨や関節等の特性を力学的に捉えて実現しますが、重さを支える支持基底面を広くとるように心掛けることがポイントです。重い物を持つ場面では足を大きく広げて腰を落とすことで支持基底面の面積が広がり、安定した介護動作を実践することができます。さらに、手先や腕先などの小さな筋肉に頼らずに、大胸筋、大腿四頭筋、広背筋といった大きな筋肉を使うことを心掛けると、より少ない力で安楽に移動などが可能となり、腰への負担も少なくなります。
また、コルセットやスライディングボードといった道具の活用によって、介護職員の腰を守る環境づくりをしている事業所も増えています。